
理学療法士が行うリハビリという業務も有名になってきました。
毎年、国家試験を80%前後の人が合格して、約1万人が理学療法士が登録されています。
- これから理学療法士になりたい。
- 理学療法士の学校に行くか迷っている。
- 理学療法士の給料、仕事について知りたい。
- 理学療法士の本当の現状を知りたい。
そういった方のお悩みに対して、実際に現場で働く私が本音で理学療法士の現状についてお答えしていきます。
本記事の信憑性
理学療法士/民間病院や大学病院等で勤務。
さっそく理学療法士の厳しい現状について紹介していきます。
目次
理学療法士の現状
理学療法士というと国家資格で安定した給料がもらえる職業というイメージの方が多いと思います。
結論から言うと、理学療法士の待遇はかなり厳しい現状にあります。
これから理学療法士になることは絶対におすすめしません。
やりがいはもちろんあるのでリハビリは好きですが、それでも私は時間が戻せるなら絶対に他の仕事に就きます。
それくらい待遇や環境はおすすめできませんし、他の医療職の方がいいです。
その理由を、理学療法士として働く中で感じている本音と現状、良い点と悪い点に分けて詳しくご説明していきます。
おすすめしない理由
まずは、おすすめしない理由と現状を本音でご説明していきます。
・人手が足りており、求人が少ない
・今後需要と供給が逆転し、理学療法士は必要ない
・給料が上がらない
・今の若手は年齢を重ねても役職に就けない
・スキルアップしても給料は変わらない
・仕事量に見合った給料がもらえない
・開業できない
・離職率が高い
・仕事が大変、責任が大きい
・技術のみでなく単位数やカルテ、書類など多くを求められる
・スタッフ間の連携が大変
・生涯勉強が必要
・学生時代の実習が地獄
少なく見積もっても、本音をいうとこれだけおすすめしない理由があげられます。
では、これらをまとめて詳しく説明していきます。
人手が足りている
理学療法士は毎年1万人が合格し、病院や施設、クリニックなどに勤務します。
1万人と聞くと多く感じますか?
10〜20年前は、高齢化社会にあわせて理学療法士がかなり求められていました。
現在、育成校が急増して多くの理学療法士が誕生していますが、求人も少なくなってきて「溢れている」状態です。
しかも、これから理学療法士が増えすぎて患者の方が少なくなり、リハビリの需要と供給が逆転する現象が起きます。
厳しく言うと、「理学療法士が増えすぎて、もう若手はいらない」という状況です。
求人はかなり減り、病院によっては人員減少や給料カットを図るところも増えているくらいです。
「国家資格で安定した職業」というこれまでの考えはすでにありません。
これから理学療法士になりたい人に最も知ってもらいたいのが、この理学療法士の厳しい現状です。
本当に夢があって理学療法士になりたい方以外、なんとなく国家資格で安定だからという方にはおすすめしません。
厳しいことをいいますが、もう必要ないのが現状です。
下記にて後述することを含めて考えてもらえたらと思います。
給料が少ない
給料事情について昇給、スキルアップのこと、奨学金などについてまとめます。
まず、昇給について説明していきます。
そもそも理学療法士は昇給がほとんどありません。
大学病院や国立病院、リハに力を入れている総合病院などの数少ない病院では毎年5000円前後の昇給があります。
しかし民間病院では昇給すらなかったり、あったとしても500円程度のところばかりです。
毎年頑張っても変わりがないので、これはかなり辛いです。
しかも、以前と比べて理学療法士の給料はかなり減ってきています。
初任給は、病院やクリニックで違いはありますが、手取りで15〜20万円程度です。
民間に20年務めたとしても昇給1000円の場合、2万円しか上がりません。
民間では福利厚生が悪いところが多く、家賃や交通費が出ない、休日も週1.5日、365日勤務でお盆や正月休みがないことはざらにあります。
では大学病院や国立病院、大手の総合病院に働けばいいのでは?と思うと思います。
しかし、これらの病院で働くには大きな壁があります。
大学や大学院、専門学校でも上位の成績であり、かつ伝統があって求人数が豊富な学校でなければほとんど受かりません。
私も大学病院に落ちて一度民間病院で働き、中途で色々な病院を受験しました。
しかもこれらの人気な求人は募集人数も大幅に減っています。
そのため、まずは民間病院に勤務する人がほとんどです。
また、国立や大学病院では初任給が民間よりも低く、民間に追いつくのに5〜10年かかります。
若い時期は給料が少なくかなり大変です。
一度民間で働き、そこから大手の病院を受験することは、新卒の優秀な人材と競わなければならないのでかなり大変になります。
スキルアップも関係ない
他にも仕事に応じた給料ではないという意見もかなり多く、業務を他のスタッフより頑張っても給料は変わりません。
様々な資格を取得してスキルアップをしても、昇給がなく給料に反映されずモチベーションを保つことはかなり難しいです。
大手の病院でスキルアップして知識や技術を身につけても、年功序列がほとんどであり給料や待遇は変わりません。
また、これから理学療法士は増えすぎるため、認定資格(より難しい資格)を取らなければリハビリができないようになっていくとも言われています。
理学療法士として働くにはさらに勉強する必要があるのに、それに対して昇給は変わらないという理不尽です。
認定をとるには研修会への参加、症例発表、勉強などかなり大変です。
また、理学療法士は役職数が少ないのに、30〜40代の人数がかなり多いのでこれから役職を目指して手当てアップも望めません。
そのため、副業をしている理学療法士はかなり多いです。
家庭を養っていくには余裕がなく共働きが必須で、専業主婦の家庭はほとんど見たことがありません。
奨学金の支払い
理学療法士になるには3〜4年生の専門学校や大学に通わなければなりませんが、かなり学費がかかります。
学費だけで400〜600万、それに加えて県内外で行われる実習の間の生活費や毎年の教科書代などかなりのお金が必要です。
私立大学では4年間で800万円のところもあるようです。
そのため、お金持ちの家以外はほとんどの人が奨学金を借りると思います。
私も実際に約600万円借りており、利子込みで800万円を40歳まで払わなければなりません。
毎月奨学金に大体3万円〜4万円を支払っている状況です。
少ない給料からそれだけの額が差し引かれ、結局手取りで13〜18万円になることは当たり前です。
県外で一人暮らしの場合は家賃手当てが出たとしても、これに加えて家賃や生活費が入るとほとんどお金は残りません。
そのため、常にカツカツの生活をするか、お金がなく実家に戻ったり長くいるスタッフも多いです。
加えて勉強会費や研修費代、毎年の理学療法士協会への支払い(2万円)など出費が多いです。
さらに歓送迎会や新年会、忘年会など院内で飲み会もかなり多いのでさらに出費がかさみます。
よく理学療法士は給料とかも安定していていいねと言われますが、正直全く安定してませんし生活に余裕はありません。
私は転勤しているので毎月支払いで手一杯な状態で、ほとんど遊ぶ余裕もありません。
奨学金を払うのに必死です。
開業できない
理学療法士は「医師の指示のもとリハビリを提供する」と決まっており、柔道整復師のように整骨院を開くことはできません。
そのため、スキルアップして技術を身につけても、開業して給料を増やすことは困難です。
働きながらトレーナーや学校の授業で講師をすることは可能ですが、もちろん土日は無くなります。
プライベートを削っても仕事で稼ぎたい方は少しは稼げますが、トレーナー活動も経験を重ねるまでは全然稼げません。
メモ
大体、1日のトレーナー活動を行っても若い時はほとんどが交通費や昼食代程度、経験が増えても5千円から多くて1万円です。
休日を削ってプライベートを犠牲にするしかありません。
離職率が高い
給料が少ないことや昇給がないこと、仕事は体力が必要であることなどで40歳前後での離職率がかなり高いです。
他にも理学療法士は医師、看護師など色々なスタッフと接するため、スタッフ間のトラブルも多いことも原因みたいです。
特に医療従事者の中で看護師と接する機会が多く、男性スタッフは気の強い看護師とトラブルがあったり話づらさもよく耳にします。
また、入職後3年以内での離職率も高くなっており、医療従事者の中でも高い数字になっています。
他にも、新卒ではプリセプターという指導者が付きますが、指導者によって考えも違い、ハズレの指導者であれば毎日が地獄です。
指導者と考えが違えばすぐ怒られたり、かなり理不尽な目にあったり、他のスタッフと揉めたり仲が悪くなったり、報連相が辛かったり。
それが嫌でうつ病になったり、1年で辞めて違う仕事へ転職する人も多々いました。
私もプリセプターが取れるまでは毎日とにかく地獄で辞めたい気持ちばかりでした。
一生勉強が必要
理学療法士は、患者のその後に大きな責任のある仕事になるため、常に新しい知識を身につける必要があります。
職場には勉強していない40代のスタッフよりも最新の知識を勉強している20代の方がリハビリに詳しかったりするくらいです。
そのため、常に新しい知識を得るため文献や参考書で勉強したり、研修会に参加する必要があります。
しかし、勉強して資格を取ったとしても昇給に反映することは稀なので、提供できるリハビリの質が向上することが目標になります。
私も最初は勉強して患者さんのためになるからと勉強のモチベーションになっていました。
勉強しても昇給や待遇は変わらないのに、私だけプライベートを削って辛い思いをしてまで勉強する必要があるのかな…と思うのが現状です。
実際に周りでは勉強することを諦めてスキルアップなど全く気にかけないスタッフもいます。
新しい後輩に舐められたり、嫌な目で見られるのでそれに耐えられる人以外は勉強する必要があります。
それ以外にも月一で勉強会を開いたり、そこで実際に発表したりと無理に勉強させられる場合もあります。
患者さんのための勉強ならなんとか耐えられますがこれが本当に面倒です。
また、職場で求められるのは患者さんへの治療より単位数(実績)とカルテ記載、書類作成、カンファレンスなど毎日口うるさく言われます。
患者さんへの正しい治療<日々の業務という感じになるのが現状で、これも結構辛いです。
業務を優先するので治療時間が縮まってしまいますし、カンファレンスや書類作成は本当に面倒です。
職場では「残業代を払いたくないから残業禁止」というところが多いですが、時間内で実績を求められて毎日逼迫している人が多いです。
「残業しても残業代は払わないよ」「自分が仕事が遅いから」「だけど実績はしっかりあげて」というような病院もあります。
いわゆるブラックですよね。
無理な仕事量でも、時間内に終わらないなら無料で残されますし、無理矢理の勉強会でも資料作成は持ち帰ってやらなければなりません。
民間病院ではこんなのは当たり前です。
私も国立系の病院にいた時、経験年数は若いのにカンファレンスにいっぱい参加させられていました。
その後にカルテ業務、書類作成をしなければならなくても、「実績はとれ、だが残るな」という無理な要望ばかりでした。
実際、時間内には終わらず無料で残業して帰るような感じです。
学生時代の実習が地獄
学生時代には最低でも2ヶ月間の実習を2回、1ヶ月を1回、2〜3週を2回ほど実習を行わなければ試験を受けられません。
その実習が本当に地獄です。
実習では指導者がつきますが、その指導者の当たり外れがあったり、実習場所によってはかなり厳しいところもあります。
毎日のレポートや勉強した内容や課題をまとめて作成して提出しなければなりません。
これが本当に大変で、毎日1〜2時間しか眠れないことはざらにあります。
実習中は常に気を使ってスタッフへ気配りや雑用をしたり、怖い指導者にも「見学させてください」と行く必要もあります。
見学中は椅子に座れればいいですが、座れないことがほとんどで常に和式トイレを使うときのような姿勢で見学です。
見学中はいくらきつくても何か質問しなければ、積極性がないと判断されてしまい成績が下がります。
睡眠不足に加えて、足が痺れて痛くなっても積極的に質問・見学に入って雑用をして夜は勉強です…
食事もなかなか入らず、ストレスもあって私は2ヶ月の実習で10Kgほど痩せました。
かなり大変で、実習中に諦めて辞める人も多いです。
まとめ
以上が理学療法士の本当の現場になります。
一見、国家資格で良い仕事や安定しているように見えますが、これだけきつい一面があります。
まとめ
・人材が足りており若手は必要ない
・給料が少なくほとんど昇給がない
・スキルアップのために勉強しても給料や待遇に変わりがない
・一生勉強が必要
・勉強会の発表だけでなく無理に研修会への参加を促される
・学費が高く、奨学金を借りると卒業後も余裕がない
・実習が地獄で辞める人も多い
・就職後3年以内、40歳前後での離職率が他の医療従事者よりも高い
多くなりますが、これだけのおすすめしない点があげられます。
私は本当にこれから理学療法士の学校に通う方にはこの記事を読んでしっかり考えていただきたいです。
本当に理学療法士になりたい方は、やりがいもあるのでおすすめします。
しかし、とりあえず安定した医療従事者になりたいという理由であれば、他の仕事をするべきです。
これからより厳しい環境になっていく理学療法士の現状について記事にしました。
理学療法士になって困る方や悩む方をよく見てきましたし、私も何回も辞めたいと思いました。
今から転職となると、なかなかうまく行かないですし、奨学金の返済もあるのでなかなか辞められない状況です。
そういった方を減らしたいですし、何か疑問点や質問があればお答えしますので、気軽に連絡いただけたら嬉しいです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。