
こんな方におすすめ
- 認知症の定義・原因について知りたい
- 家族・自分の認知症リスクを下げたい
本記事の内容
理学療法士として総合病院勤務。日々、認知症患者さんに対応してリハビリを行なっています。
まず、認知症と聞くとどんなイメージをもたれますか?
高齢者がかかるもので、「記憶力の低下」「物忘れ」「家族すら分からなくなる」「徘徊などで介護が必要」などのイメージだと思います。
現在、日本では65歳以上の方の約4人に1人が認知症、またはその予備軍であるとされています。
高齢化社会へ移行していくためさらに認知症患者が増えていくと予想されます。
目次
認知症を発症する原因
認知症を発症する確率は、年齢にともない上昇します。
65歳未満の人と比較して、70歳で3.6倍、75〜79歳では約7倍とも言われていることから、年齢が関わってくることはわかります。
しかし若年性アルツハイマーの方もいれば、90歳でもしっかりしている方もいます。
では原因はなんなのか?
アルツハイマー型認知症の原因物質として、アミロイドβやタウたんぱく質が関与していると言われています。
それぞれ簡単に説明していきます。
アミロイドβ
神経の細胞膜で作られたタンパク質の一種になります。
簡単に言えば、脳内のゴミです。
脳が正常だとこのゴミが脳から排出されますが、年齢や脳機能低下に伴い排出機能が衰え、脳内に溜まり始めます。
すると、これらが集まってアミロイド繊維になります。
この繊維が、神経細胞や脳内の伝達に働くシナプスに対して毒性を持つとされています。
結果、これが脳内に悪影響になるということです。
アミロイドβは40代後半からすでに溜まり始めると報告されています。
タウたんぱく質
タウたんぱく質は、神経細胞を支えるような役割を果たします。
そのタウたんぱく質が何らかの原因でリン酸と結合すると、糸状の塊になります。
その塊の毒性によって、神経細胞が死んでしまうとされており、これを「タウ仮説」と言います。
タウたんぱく質は60代後半から溜まり始めると言われています。
まとめ
脳の中に異常タンパク質が溜まり、悪さをすることで神経細胞を殺したり、記憶障害が発症するということになります。
認知症の定義
認知症とは、特定の病気を指す病名ではありません。
日本精神神経学会では下記のように定義しています。
獲得された知的機能が、好転的な脳の器質的障害によって持続的に低下し、日常生活や社会生活を営めなくなっている状態。それが意識障害のない時にもみられる。
認知症疾患診療ガイドラインより引用
専門的になりますが、色々な病気が原因で脳機能が低下してしまい、日常生活や社会生活が営めない状態です。
色々な病気が原因であるため、加齢のみが原因ということではありません。
認知症の病因
主な病因
- アルツハイマー型認知症
- レビー小体型認知症
- 脳血管性認知症
- 前頭側頭型認知症(ピック病)
- その他
認知症を引き起こす原因は、脳に関連するものだけでなく、脳とは関係がなさそうなものまで様々です。
上記①〜④までが原因として多く、全体の約8割を占めるので、一つずつ紹介していきます。
アルツハイマー型認知症
全体の5割以上を占めるとも言われています。
脳内に異常タンパク質がたまり、神経細胞がダメージを受けることで起こります。
認知症の代表例で、主に記憶障害や判断力障害を認めます。
レビー小体型認知症
全体の約15%を占めます。
レビー小体という異常たんぱく質が神経細胞にでき、細胞が死滅することで起こります。
パーキンソン病のような症状が出やすいです。
脳血管性認知症
脳梗塞や脳出血などにより脳細胞に酸素が送られなくなり、神経細胞が死滅してしまうことで認知症を引き起こします。
全体の10%を占めます。
前頭側頭型認知症(ピック病)
脳の前頭葉と側頭葉が萎縮することで起こります。
若い時に発症したり、記憶障害があまり起きないことが特徴です。
その他の病因
主に認知症を発症する原因としては上記が挙げられます。
認知症はそもそもの原因として生活習慣病が理由であるとされています。
肥満や運動不足、喫煙、飲酒などで生活習慣病になると、糖尿病や高血圧、うつ病を引き起こします。
重要
生活習慣病は認知症の発生原因になり、生活習慣を改善するだけで認知症の1/3を予防できると言われています。
イギリスでは実際に、禁煙や減塩を推進し、生活習慣病の予防へ取り組むことで認知症有病率を減少させたと報告があります。
日本でも、「久山町研究」という、認知症と高血圧、生活習慣などの関係性を明らかにした研究があります。
それらの内容と、認知症に関する最新の研究についてご紹介していきます。
糖尿病の人は認知症になりやすい
糖尿病の人は、血糖値が正常な人の2.1倍、食後高血糖(耐糖能異常)の人は1.6倍もアルツハイマー型認知症にかかるリスクが高いとされています。
耐糖能異常とは、食事で摂取した糖質によって血糖値が高くなった時に、それを正常まで下げる能力が低下している状態です。
脳血管性認知症に関しても、糖尿病の人は1.6倍、食後高血糖の人は1.4倍も正常な人と比べて発症率が高くなっています。
糖尿病について
糖尿病とは
血液中のブドウ糖を取り込めず、停滞するためブドウ糖が増加する状態です。食後はインスリンが分泌され糖質を取り込みますが、糖尿病ではインスリンがうまく機能しません。
結果、血液中に糖が溢れてしまいます。
血液中の糖は体に悪影響ばかりで、末梢神経や血管にダメージを与えます。
その結果、下記のような合併症を呈することが多いです。
糖尿病性網膜症:目の毛細血管が破れて視力低下または失明する。
糖尿病性腎症:腎臓では濾過が行われますが、血管が破壊されて濾過できなくなる。
糖尿病性神経障害:末梢の血管や神経が破壊され、足先の感覚消失や血流不良で怪我が治らず壊死する。
糖尿病では脳の至る所の末梢血管が破壊されたり、動脈硬化を起こすことで栄養や酸素が行き渡らないことで脳細胞が死滅します。
結果、糖尿病により認知症を助長または発症するリスクになります。
糖尿病患者は増加傾向
糖尿病の患者は厚労省の調査によると、前回(2014年)から約12万人増加して、現在は約328万人もいると発表しています。
生活スタイルの欧米化にともない、若年層でもさらなる増加が危惧されています。
病院でも40代から入院してこられる方も増えています。
高血圧は脳血管性認知症になりやすい
高血圧はアルツハイマー型認知症との関連性は認めませんでしたが、脳血管性認知症のリスクが高くなったと報告されています。
老年期で高血圧になるよりも中年期から血圧が血圧が高い人は、正常な人より約10倍もリスクが高いとされています。
脳血管性認知症のリスクとして、老年期・中年期ともに血圧が140/90未満の人と比較した、血圧レベルによるリスクを下記にまとめます。
・中年期から血圧が140/90未満でも老年期にそれ以上の郡は3.3倍に上昇。
・中年期から血圧が140/90以上の人で、老年期もそのままなら5.3倍、老年期に140/90以下でも4.7倍である。
老年期のみでなく中年期から血圧管理をする重要性がわかります。
血圧管理は疎かになりがちですが、重要なので若いうちから気をつけましょう。
肥満の人は認知症発症リスクが高い
肥満度の数値(BMI)が高い人も、認知症のリスクが高いということがわかっています。
BMIが正常な群に対して25以上の肥満体型群では、認知症のリスクが2.4倍にも上昇すると報告があります。
逆に、痩せすぎている群でもリスクが1.8倍まで上昇したという結果もあります。
肥満の人は、運動不足や食生活の乱れから血圧上昇や糖尿病のリスクが高いことが原因であると考えられています。
適度な運動、適切な食事をして血圧に注意するだけでも認知症予防に効果があることがわかります。
まとめ
今回は認知症の原因やリスク、定義について記事にしました。
認知症は年齢とともにリスクは増加し、遺伝的なところも原因になりますが生活習慣を整えるだけでリスクはかなり軽減できます。
40代から認知症リスクは増加します。
認知症は自分自身ででなく、家族に負担がかかります。
糖尿病・高血圧・肥満にならない生活を心がけて、少しでも認知症予防に努めましょう。
ここまで読んでいただきありがとうございました。