
本記事はこんな方におすすめ
- 運動前にストレッチが逆効果である理由を知りたい
- 正しいウォーミングアップを知って怪我を予防したい
- 効果的なストレッチのタイミングを知りたい
この記事の信憑性
理学療法士として病院に勤務。バスケ部のトレーナーとしても活動し、高校生のトレーニングや栄養などを指導。怪我の予防活動として高校野球のサポートなどもさせていただいています。
運動前のウォームアップは怪我の予防のためには重要です。
プロ野球選手も試合前は入念にキャッチボールをしたり、走ったりして体を温めて最大のパフォーマンスを発揮しています。
正しいストレッチには怪我を予防できるという根拠があるためです。
しかし、ストレッチは筋トレや運動の前に行うとパフォーマンスを低下させるという報告があります。
よく試合前に前屈やアキレス腱をグッと伸ばしたり、長くストレッチして試合に臨む人もいると思います。
結論から言うと、それは間違いです。
正しいやり方でなければパフォーマンスは下がり、怪我の原因になります。
科学的根拠に基づいて、パフォーマンスを発揮するためのストレッチ方法、運動前の正しいストレッチのやり方、間違いなどを説明していきます。
目次
ストレッチの種類
ストレッチには静的ストレッチと動的ストレッチの2種類があります。
それぞれの内容や正しい最近の報告と、メリット・デメリットを紹介していきます。
静的ストレッチ(スタティックストレッチ)
反動をつけずに筋肉を伸ばしたまま静止するストレッチです。
開脚や前屈、アキレス腱を伸ばすなどの止まったまま行う動作です。
目的としては、関節の可動域向上や血流の促進、疲労回復やリラックスになります。
以前は運動前に、筋肉の柔軟性を高めるために静的ストレッチを行うことで怪我の予防になると考えられていました。
しかし、現在では下記のように報告されています。
最新の報告
運動前の静的ストレッチは怪我の予防に効果が薄く、むしろパフォーマンスを低下させると言われています。また、静的ストレッチを筋トレ前に行うと、2割も筋トレの効果が減少したとの報告もあります。
運動前に静的ストレッチを行いがちですが、間違いということです。
もちろん静的ストレッチも重要なため、ストレッチのタイミングやどんなウォーミングアップが効果的かは後述します。
動的ストレッチ(ダイナミックストレッチ)
体を動かしながら柔軟性を高めていくストレッチです。
ラジオ体操やサッカーで有名なブラジル体操などです。
立ち止まって行うストレッチではなく、体全身を動かす運動のようなイメージですね。
目的としてはパフォーマンスアップ、怪我の予防、筋肉の柔軟性向上になります。
メモ
運動前に行うべきなのは動的ストレッチが推奨されます。筋肉が温まることで高いウォーミングアップ効果があり、怪我の予防やパフォーマンスアップ効果が高いです。
運動の種類
・太ももあげや足を外へ開く運動
・体を捻ったり、手を一緒に動かしながら側屈する
・肩甲骨を寄せながら手を上下左右へ開く
・足を上げて足先を手で触る
体を全身的に使える運動ならなんでも大丈夫ですが上記の運動はおすすめです。
静的ストレッチが悪影響を及ぼす理由
静的ストレッチを行うと、運動でのパフォーマンスを低下させ、筋肥大効果も減少させてしまいます。
その理由
・運動単位が働きにくくなる
・筋肉の粘性を低下させる
・運動回数と総負荷量が減少する
それぞれ一つずつ紹介していきます。
運動単位が働きにくくなる
運動単位とは、一つの運動神経が支配している筋繊維の数になります。
これは、数十本の筋繊維を支配する小さな運動単位と数千本支配する大きな運動単位に分けられます。
筋肉への負荷に伴い、運動単位はより小さなものから働き、大きな負荷になるほど多くの運動単位が活動します。
メモ
常に大きな運動単位が働いてばかりだと無駄に力を発揮してコスパが悪く疲れます。そのため、軽いものには小さな運動単位で十分だと神経が判断し、重いものを持つ時には大きな運動単位に移行するイメージです。
静的ストレッチを運動前に行うことで神経活動の発火頻度が減少し、この運動単位が働きづらくなってしまうのです。
10個の運動単位がある場合、限界まで重いものを持つと全てが活動するはずですが、8つしか活動せず力が発揮できなくなる感じです。
すると本来よりもパフォーマンスが低下してしまいます。
筋肉の粘性を低下させる
筋肉には元々、ある程度の粘弾性があるためゴムのように伸び縮みをしてくれます。
しかし静的ストレッチは伸ばしすぎることでこの機能が低下し、トレーニングでの筋出力が低下してしまいます。
伸びきった筋肉や腱は本来のクッション効果も減少することで、パフォーマンスは低下して逆に怪我のリスクになります。
運動回数と総負荷量が減少する
上述したように運動単位が減少すると運動回数や強度が減少し、総負荷量が下がり筋肥大が起こりにくくなります。
総負荷量とは、運動強度×回数×セット数のことで筋肥大で重要とされていることです。
メモ
以前は重い重量を持つことで筋肥大に効果があるとしていましたが、最近ではこの総負荷量が最も重要だと言われています。具体的には、100kgの重りで10回行うのと50kgで20回行うのとでは筋肉合成への効果に変わりはないということです。
静的ストレッチでは、発揮できる力が低下して総負荷量を低下させてしまいます。
結果、筋肥大が起こりづらくなります。
以上3つが静的ストレッチが運動や筋トレ悪影響を及ぼす理由です。
最適な筋肥大方法や、総負荷量の重要性について詳しく知りたい方は下記の記事をぜひ参考にしてください。
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科学的に正しい筋トレのレビューと感想まとめ【理学療法士が要約】
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では、実際に筋トレ前はどうしたらいいのかをご紹介していきます。
トレーニング前に何をすべきか
実際にどんなことを行うといいのか、運動前後のストレッチの取り入れ方やウォーミングアップ・怪我の予防方法をまとめていきます。
ポイント
・動的ストレッチ
・有酸素運動を10〜20分行う
・トレーニングと同じ運動を軽い強度で行う
・筋膜リリース
それぞれの競技特性に合わせて、行うことをおすすめします。
これら4つがおすすめなので、一つずつご紹介していきます。
①動的ストレッチ
静的ストレッチは運動前には行わない方がいいですが、上述したように動的ストレッチは運動前には有効です。
動的ストレッチを行うことで筋肉の温度が上昇し、高いウォーミングアップ効果があります。
運動中の怪我の予防、パフォーマンスアップなどしっかりとした準備が可能です。
②有酸素運動を軽く行う
有酸素運動を筋トレや運動前に軽く行うと筋肉の温度が上昇し、怪我の予防とパフォーマンス向上になると言われています。
目安として軽いジョギングやエルゴメーターを心拍数が高くなりすぎない程度に行いましょう。
最大心拍数の6割程度が好ましいです。最大心拍数=220−年齢とされています。
筋トレや運動前に走りすぎて疲労感が残るようだと逆効果です。
体が少し温まる程度がおすすめです。
ランニング前であれば、動的ストレッチやゆっくりのジョギングから行うようにしましょう。
③トレーニングと同じ運動を軽い強度で行う
これは筋トレやサーキットトレーニング前に行うことがおすすめです。
筋トレ前のウォーミングアップで最も効果的だとされています。
有酸素運動と併用することでトレーニング時の筋出力が上がったと報告がありますが、有酸素運動を行わなくてもこれだけで十分です。
実際に行う目安として、全力で上げることができる重量の3割で約20回行える運動がおすすめです。max70kgのベンチプレスをするなら、20kgを20回になります。
段階的に負荷量を上げていくウォーミングアップであるため、怪我の予防効果が高くパフォーマンスが発揮しやすいです。
④筋膜リリース
筋膜リリースでは、筋膜の癒着や萎縮を改善して正常な状態に戻し、痛みの軽減効果や柔軟性を改善することができます。
柔軟性の改善によって可動域が広がるため、筋肥大やパフォーマンスアップだけでなく、怪我の予防につながります。
腰が痛い人は、太腿やお尻をリリースするだけ痛みなどの症状が改善し、動作もスムーズになります。
筋膜リリースを行なってから動的ストレッチや③のような低強度の運動から行うことで体を温めやすくなるのでおすすめです。
デスクワークや仕事、スマホをいじると猫背や筋膜が癒着しがちなので、運動前に正常な体に柔軟性を高めてから行うと怪我しにくく効率がいいです。
どうしても静的ストレッチがしたい方
運動前には絶対行いたいという方は下記をおすすめします。
おすすめ
行わない方がもちろんいいですが、運動前に行うなら1つの筋肉へのストレッチを30秒以内にしましょう。30秒以内なら筋肉が伸びづらいので筋出力が減少しづらく、パフォーマンスへ影響しにくいです。
運動やトレーニング後に何をすべきか
次にトレーニング後のケアとして行うべきことをご紹介します。
行うべき2つ
・静的ストレッチ
・筋膜リリース
トレーニングや運動後は、次の日に疲労や筋肉痛をなるべく残さないことや、筋肉を硬くせずに柔軟性を保つことが重要です。
静的ストレッチ
静的ストレッチは運動前には行うべきではないと繰り返しましたが、運動後にはぜひ行うべきです。
効果として下記の3つがあります。
・血行の促進
・リラックス効果
・柔軟性の向上
筋肉がほぐれると体の柔軟性が改善し血流を促進させ、酸素や栄養も届きやすくなります。結果、疲労物質を流して疲労感の軽減や筋肉痛の予防効果が期待できます。副交感神経を高め、運動で興奮していた体を落ち着かせてリラックス効果もあります。
トレーニング後は筋肉が硬くなりやすく、筋肉痛で次の日のパフォーマンス低下につながります。
また、硬くなった筋肉は通常よりも柔軟性が低下して怪我のリスクにもなるので注意しましょう。
筋膜リリース
筋膜リリースは運動前後どちらも推奨されています。
ストレッチをしっかり行われている方はそれだけで効果は高いですが、付け足すことでより効果が高まります。
運動後に行うと運動で損傷されて硬くなった筋肉をほぐし、血液循環が改善するので疲労回復効果があります。私はトレーニング前後に行っていましたが、どちらも効果を感じました。
運動後に行うと、次の日いつも硬かった体が動かしやすく、筋肉痛も早く治り翌朝の疲労感が少ないです。
怪我の予防や痛みを和らげる効果、リハビリの治療としても現場で使用しています。
メモ
痛みが強くない範囲でゆっくりと無理なく行いましょう。筋膜は筋肉の上を覆っているもので、軽くやっていてもほぐれてくれます。我慢してまで行うと筋膜を超えて筋肉をゴリゴリして、痛みを感じるだけになります。
部活動や社会人で運動をされている方など、怪我をすると部活や仕事にも支障をきたします。
怪我の予防のためにもトレーニング前後にぜひ行ってみてください。
他の製品も試してみましたが、これが一番使いやすかったのでおすすめです。
日本正規品で一年保証がつくので安心ですね。
まとめ
今回は運動前のストレッチや正しいタイミングなどを記事にしました。
運動前には筋膜リリースや体を動かすような動的ストレッチ、低強度の運動から行い、運動後には静的ストレッチなどのケアを行って怪我の予防や疲労回復につとめましょう。
自分の体のケアは本格的に行っていない人は特に重要です。
入院患者様で若い方などは、運動中にアキレス腱の断裂や靭帯の断裂などを発症していますが、ウォーミングアップ不足や体の柔軟性が悪い人がほとんどです。
怪我をすると自分が辛いだけでなく、職場や周りの方にも迷惑をかけてしまいます。
怪我をしないためにウォーミングアップ、運動後のケアを行うようにしましょう。
ここまで見ていただきありがとうございました。