
このような疑問を解決していきます。
そもそも筋力とは、筋肉の発揮できる能力になります。
前提として、筋肉が大きい=筋力が強くてパフォーマンスが高いというわけではありません。
もちろん、筋肉の面積が大きいほど筋力は発揮しやすいです。
しかし、競技によっては大きすぎる筋肉がかえってスピードが遅くなり邪魔になることがあります。
例えば、サッカー選手に大きい筋肉は必要なく、体は細くても芯がしっかりして強い人もいます。
パフォーマンスを上げるには、筋肉を大きくするよりも筋肉の発揮する能力、つまり筋力を向上することが重要になります。
今回はスポーツ競技の筋力向上やパフォーマンスアップがしたいという方に対して情報をまとめました。
目次
筋力を発揮するには
筋肉が大きければ筋力が強いわけではないと上述しましたが、これは神経系の活動が関与しているためです。
筋肉を動かすには脳の神経から筋肉へ指令が伝わることで起こります。
ポイント
神経が筋肉を支配しており、運動時には神経活動が起こって筋肉を動かす必要があります。この一つの神経が支配する筋群のことを運動単位といいます。
筋トレなどで神経系へ刺激を入れたり、その神経が支配して活動する筋肉の割合が増員すると運動単位が増加します。
つまり活動する筋肉の量が多くなり筋力がアップし、パフォーマンスが上がります。
強い筋力を出すためには筋肉の大きさだけでなく、神経活動を高めて多くの運動単位が動員されることが重要です。
神経活動の適応
繰り返しますが、筋肥大が起きなくても神経活動が高まることで筋力は向上できます。
また、神経活動がうまく動作に適応して慣れていくことでも発揮できるパフォーマンスはアップします。
例:神経が支配している筋繊維が1000個あった場合。
Maxの力を発揮した場合も、この筋繊維1000個全てが使われるわけではありません。
運動時に収縮する筋繊維のタイミングがずれたり、働かない筋繊維もいたり、運動の種類によって使われる筋の様式が違うためです。
速い運動の時、遅い運動の時など使われる筋繊維は変わり、その都度神経系がうまく適応しています。
例:初心者のバッティング
最初はうまくできなくても繰り返し素振りをすると、筋肥大は起きなくても神経系の活動が適応するため、動作が上手くなっていきます。
これらを神経系活動の適応といいます。
筋力増強のためには、うまくスポーツや動作で活かすために、神経活動を適応させていく必要があります。
筋力を増強するには
結論から言うと、高強度トレーニングが最も重要です。
筋肥大においては高強度トレーニングよりも総負荷量が重要であり、運動スピードは8秒以下がいいとされています。
それに対して、筋力向上には6秒以下の運動スピードで行う筋力訓練が最も効果があったと報告されています。
目的に応じてトレーニングを行いましょう。
筋力増強効果=筋肥大+神経活動の適応で決定されます。
では、筋力トレーニングの仕組みと特徴、やり方について説明してきます。
筋力トレーニングの仕組み
ウエイトトレーニングや自重トレーニング、マシントレーニングなどは筋肉へ抵抗を与えるため、レジスタンストレーニングといいます。
筋肉は収縮する方向にしか力を発揮できないので、重りや体重を利用して逆向きの抵抗を与えることがトレーニングになります。
競技における筋力トレーニングでは、目的によって行い方を変える必要があります。
ウエイトリフティングと野球など、競技によって最適なトレーニングは変わってくるためです。
より専門的に考えて取り組むことで最も効率的にパフォーマンスアップにつながります。
レジスタンストレーニングの効果
最大筋力30%以下の弱い負荷の運動、つまり数十回も可能な負荷での運動では筋力アップ効果は期待できないとされています。
そのため、筋力アップには10〜20回で限界を迎えるような運動を行うと効果が高いです。
複数回行うトレーニングは筋持久力がアップでき、長時間のパフォーマンス発揮が必要な運動には重要です。
また、怪我のリスクも回数によって変わってきます。
トレーニングにおいて70%程度(10回可能な負荷)からほぼ上限に達し、1回が限界である運動など負荷が上がるにつれて怪我のリスクも上昇していきます。
負荷の増加に伴い怪我のリスクも上がるため、競技によって適正のある運動を行う必要があります。
トレーニング効果の特異性
上述したように、筋肉は刺激を受けるとうまく適応できるようになっていきます。
トレーニングによって刺激を入れますが、強度や回数が異なれば効果も異なってきます。
これをトレーニングの特異性と言います。
パフォーマンスアップのためにトレーニング効果の特異性を利用して取り組む方法をご紹介します。
チェックリスト
- ①基礎的な筋力の向上
- ②専門的な筋力の向上
- ③パフォーマンスアップ
この順番でトレーニングを行なっていくといいです。
①基礎的な筋力の向上
スポーツで高いパフォーマンスを発揮するにあたって、まずは基礎的な筋力が重要になります。
元々筋力がある人とない人では、スポーツを開始してもそれだけで差がありますよね。
そのために、
・全身の筋群をバランス良く鍛える
・最大筋力のアップする
・筋や腱などの能力向上
を目標にまずは取り組みましょう。
部活を始めたばかりの頃は筋トレや走り込み、インターバル走をやり込むようなイメージです。
②専門的な能力の向上
多くの方がこれに当てはまると思います。
専門とするスポーツ動作にできるだけ類似した運動で筋肉をトレーニングしていきます。
・運動スピード
・筋収縮様式
・動作の角度
これらから運動を考えて、トレーニングしていきましょう。
野球を例に上記の三つを説明していきます。
運動スピード
バッティングでは一瞬の力が重要であるのに対してゆっくりとしたトレーニングを行っても効果が薄いことはイメージがつくと思います。
速いスピードで強度のある運動を行うことで、その動作における運動単位が増加し、神経の適応も起きるため、より強いバッティングができるようになります。
筋収縮の様式
バッティングではバット早く振る力が重要です。
それぞれ肘を伸ばす、手首を返すなどの動作がありますが、その動作を行うための筋力をアップするといいです。
その中でもその動作ごとに重錘やダンベルなどを利用してそもそもの筋力をアップすると、パフォーマンスは高まります。
動作の角度
ボールを投げるときに振りかぶって投げますが、腕を広げてから投げ始める直後に肩にかかる負荷を初動負荷と言います。
この初動負荷におけるトレーニングも重要です。
初動負荷で発揮できる筋力が向上すれば、それだけパフォーマンスもアップします。
イチロー選手は、筋肥大を目的とせずに初動負荷トレーニングのみ行っていたと言っています。
これらの運動様式をイメージして、競技特性からトレーニングを行うとより効率的になります。
負荷の強さや回数、セット数などを少しずつアップしていきましょう。
③パフォーマンスアップにつなげる
①、②のトレーニングを行い、基礎・専門的な筋力をアップしたのち、スポーツ特性によってより質をアップしていくようにします。
専門的なトレーニング後に、バッティングを行うとこれまでより早く、強いスイングになっていると思います。
また、筋肥大を目的としたトレーニングを行った場合、それらをうまく利用できるよう反復して神経系の適応を高めていきます。
①、②で高めた能力を実践や練習で確認して、足りない部分を見つけましょう。。
実際に確認して、弱いところを①、②と再度目的に応じてトレーニングを行い、反復して鍛えていくことで更なるパフォーマンスアップにつながります
除脂肪体重を増やす
よりパフォーマンスを高めるには、除脂肪体重を増やすことが重要です。
筋力を発揮する上で重要なことは除脂肪体重の増加と体脂肪の減少です。
パワー=筋力×スピードですが、脂肪は質量にはなってもスピードは生み出してくれません。
そのため、体重が同じでも筋肉量が多く体脂肪が少ない方が発揮できるパワーが上がると言うことです。
筋肉量を増やし、脂肪を減らして運動スピードの向上につなげましょう。
※筋肉をいくら大きくしても神経系の適応がうまくいかないと体の硬い動きしかできません。その都度確認しながらトレーニングを行いましょう。
より効果を高めるには
重要なことは小分けにタンパク質を摂ることと、食間の栄養補給です。
タンパク質は、体を大きく強くするのに重要ですが、三食で均等な摂取の方が筋肉の合成効果が高かったと報告されています。
一食で多く摂取しても代謝しきれずに尿から排出されたり、体脂肪になるだけです。
三食で摂るのが難しい人は、捕食でプロテインなどから摂るようにしましょう。
捕食で摂ることで、食間の筋肉の分解を防ぎ、より効率的に筋肉の合成が働きます。
トレーニング直後は、筋肉の合成を促すためにもタンパク質と糖質を摂りましょう。
他にも、エネルギー代謝を促す働きに重要なビタミンB・C群、亜鉛などのミネラルが不足しないことも重要です。
案外忘れがちなのが、休息です。
毎日ベンチプレスをかなり頑張っても、疲労が蓄積してオーバートレーニングで怪我の原因になります。
レジスタンストレーニング後は栄養補給をしっかりして、行った部位は48〜72時間の休憩を取るようにしましょう。
その間はトレーニングを行っていない部位を鍛えるようにします。
計画的に行うことが重要です。
まとめ
今回は筋力を高めてパフォーマンスをアップする方法をご紹介しました。
筋力をアップすることで、これまでより高いパフォーマンスを発揮することができますがやり方を間違えると、競技によっては逆効果となってしまいます。
競技によって正しい筋力を、正しいやり方でうまく鍛えられるように意識して行いましょう。